与三郎は侍の子に生まれたが、お家の事情から江戸元町伊豆屋の養子となっていた。ところが、伊豆屋に実子が生まれたことから弟に家督を譲ろうと放蕩に身を持ち崩し勘当を受けると流れついた木更津で地元の親分源左衛門の妾お富を見初める。与三郎とお富が忍びあっているところを源左衛門に見つかり、与三郎は総身に刀傷を受け命だけはとりとめる。一方、お富は追い詰められ海に身を投げるが、通りかかった商船に助けられ和泉屋の大番頭多左衛門に囲われることとなる。
それから三年。鎌倉の源氏店。お富が風呂上りに家に戻ってくると、和泉屋の番頭・藤八が家の前で雨宿りをしていた。お富が雨がやむまでと藤八を家に招き入れると、実はお富に気があった藤八は何のかんのと言い寄るがお富は軽くあしらう。そこへ偶然、与三郎とごろつき仲間で頬に蝙蝠(こうもり)の入れ墨のある「蝙蝠の安」がやってくる。
蝙蝠安は与三郎の傷の養生代だと言ってお富を強請(ゆす)る。最初は断っていたお富だったが、押し問答となって「今では立派な亭主のある体だ」と啖呵をきり、一分(一両の四分の一の銀貨)を投げる。蝙蝠安はそれを有り難く受け取って引き下がろうとするが、それまで黙っていた与三郎はそれを押しとどめた。与三郎はお富に歩み寄ると「久しぶりだなぁ」と声をかける。
驚くお富に向かって与三郎は「お前との、しがない(つまらない)恋の情けが仇となって、今のように落ちぶれてしまった」と自分の境遇を語り、「死んだはずのお富に出会うとはお釈迦様でも気が付かないだろう」と悪態をつく。そしてこのままではすまさないとお富を責める。お富は囲われてはいるが決してやましいことはなく、お前を忘れたことはないと語るが、与三郎は信じない。
そこへ、多左衛門が帰ってきた。蝙蝠安は親の代から多左衛門に世話になっている身だったので縮み上がってしまう。多左衛門から与三郎との関係を聞かれたお富はとっさに「兄さん」だと話してしまう。多左衛門は与三郎に向かって「囲ってはいるが男女の関係ではない」と話し、かたぎの商売を始めるようにと金を渡した。
金をもらった与三郎と蝙蝠安が引きあげた後、多左衛門はお富に自分の守袋を渡して店へと戻っていく。お富が守袋を開けると中に入っていた臍の緒書から多左衛門が自分の実の兄であったことを知る。そこへ戻ってきた与三郎にもそれを伝え
二人で多左衛門に感謝し、これからは二人で生きていくことを誓う。
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